社会保険労務士法人 全就連
助成金ニュース

助成金を活用した労働時間対策の方法

助成金ニュース 2017年7月号

長時間労働・サービス残業が企業経営に与える影響

長時間労働やサービス残業に対する行政の取り締まりが強化されています。2015年に労働基準監督署による「定期監督」などを受けた事業所は15万5428件に達し、その約7割にあたる10万7816件で違反が発覚しています。そして、1348社が総額99億9423万円の未払い残業代を支払うことになりました。さらに、2016年に大手広告代理店の社員が自殺した事件が起きたことにより、過重労働撲滅に対する機運が一気に高まっています。

さらに2016年から2017年にかけては、ヤマト運輸のセールスドライバーへの未払い残業の問題が発覚して大きな話題となりました。その他にも「ABCマート」「ドン・キホーテ」「三菱電機」「パナソニック」といった有名企業が、違法な長時間労働で書類送検されています。

このように、もはや労働時間の問題というのは、労務管理の枠を超えて大きな経営問題になっているのです。実際にヤマト運輸は、社員に対して190億円もの未払い残業代を支払うことになりましたし、大手取引先(アマゾン)との契約の見直し(当日配送の中止、運賃の改定など)、宅配便の総量コントロール、社員9200人の増員などを行うことまで表明しています。つまり、労働時間の問題がビジネスモデルまでを変えてしまったということです。「働き方改革」の流れを受けて、労働時間の問題がこれから益々クローズアップされることは間違いありません。

70年ぶりに労働基準法が大きく変わります!

さらに来年には労働基準法が70年ぶりに大きく改正されることがほぼ確実となっています。特に、労働時間に関しては厳格な管理が求められることが予定されています。そこで、まずは労働時間に関するルール(法律)について確認をしておきたいと思います。現状の労働基準法で決められていること、さらに来年改正が予定されている内容を含めて整理すると以下のようになります。

★1日8時間、1週間40時間が原則。
★時間外労働をさせるには労使協定(36協定)と割増賃金の支払いが必要となる。 
★36協定の上限時間は、1カ月45時間、1年360時間。 
★ただし、労使で特別条項を締結すれば6カ月間は実質無制限に働かすことができる。 
★一方、過労死の労災認定基準は1カ月100時間または2~6ヵ月の平均80時間となっている。
★そのため、政府は労基法を改正して労働時間の上限を設ける方向で検討中。 
★残業時間の上限を「原則月45時間」「年360時間」とする予定。 
★6カ月間の例外も「月最大100時間」「2ヵ月平均80時間」とする予定。
★その場合でも、「年間720時間」「月平均60時間」に抑えるように義務づける。 
★違反した場合には罰則が課される予定。

もちろん、これは法律ですから中小企業であっても例外ではありません。今後はしっかりとした労働時間管理をしなければならないのです。では、具体的には何をしなければならないのでしょうか?

企業に求められるのは労働時間の適正な把握

労働時間管理に関して厚生労働省は、平成29年1月20日に「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」を新たに策定しました。本ガイドラインの主なポイントは以下の通りです。

<労働時間の考え方>

・使用者には労働時間を適正に把握する責務がある・労働時間とは使用者の指揮命令かに置かれている時間であるが、明確な指示を出していなくても使用者が黙認し ていれば、労働者が業務に従事する時間は労働時間に当たる・参加することが義務づけられている研修の受講や使用者の指示により業務に必要な学習等を行っていた時間は労 働時間に該当する

<労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置>

・使用者は、労働者の労働日ごとの始業・終業時刻を確認し、適正に記録すること
・原則的な方法として、自ら現認することにより確認すること・タイムカード等の客観的な記録を基礎として確認し、適正に記録すること
・やむを得ず自己申告制で労働時間を把握する場合は、対象となる労働者に対して適正に自己申告を行うことなどについて十分な説明を行うこと
・自己申告により把握した労働時間が、実際の労働時間と合致しているか否かについて、必要に応じて実態調査を行い、所要の労働時間の補正をすること
・自己申告制は、労働者による適正な申告を前提として成り立つものであることから、使用者は労働者が自己申告できる時間外労働の時間数に上限を設ける等、労働者による労働時間の適正な申告を阻害する措置を講じてはならない

<賃金台帳の適正な調製>

・使用者は、労働者ごとに、労働日数、労働時間数、休日労働時間数、時間外労働時間数、深夜労働時間数 といった事項を適正に記録しなければならない以上のように、本ガイドラインは企業に対して労働時間を適正に把握するための管理体制を整備することを求めています。そこで、本稿では労働時間対策に活用できる助成金についてご紹介したいと思います。

労働時間対策に使える助成金とは?

中小企業事業主が、所定外労働の削減、年次有給休暇の取得促進、その他労働時間等の設定の改善を図るために、職場意識の改善のための研修や労働時間の管理の適正化に資する機械などの導入等を行った際に、要した費用の一部を助成する制度があります。それが、「職場意識改善助成金」です。この助成金には、以下の5つのコースがあります。

<職場環境改善コース>

所定外労働時間の削減や年次有給休暇の取得促進を図る中小企業事業主に対して、その実施に要した費用 の一部部を助成するものです。

<所定労働時間短縮コース>

所定労働時間の短縮を図る中小企業事業主に対して、その実施に要した費用の一部を助成するものです。
ただし、本コースは労働基準法の特定措置対象事業場で所定労働時間が週40時間を超え週44時間以下の 中小事業主が対象です。

<時間外労働上限設定コース>

時間外労働の上限設定に取り組む中小企業事業主に対して、その実施に要した費用の一部を助成するものです。 ただし、現に「労働基準法第36条第1項の協定で定める労働時間の延長の限度に関する基準」(厚生労働省 告示)に規定する特別条項を締結している中小企業事業主が対象です。

<勤務間インターバル導入コース>(平成29年2月新設)

過重労働の防止及び長時間労働の抑制に向け、勤務間インターバルの導入(休息時間数を問わず、就業規則 等において「終業から次の始業までの9時間以上の休息時間を確保することを定めているもの」)に取り組む事業 主に対して、その実施に要した費用の一部を助成するものです。

<テレワークコース>

終日、在宅またはサテライトオフィスにおいて就業するテレワークに取り組む中小企業事業主に対して、その実施に 要した費用の一部を助成するものです。なお、本コースは「一般社団法人日本テレワーク協会」で受付を行っております。

なお、それぞれのコース毎に支給対象となる事業主や支給対象となる取組に要件があります。
詳しい要件や助成額等は厚生労働省ホームページ等でご確認下さい。

まとめ

本稿では労働時間管理が経営に与えるインパクトについてお伝えをしました。来年には労働基準法の大改正が行われ、行政の取り締まりも益々厳しくなることが予想されます。その一方で、労働時間を適正に管理する体制を整備し、職場意識の改善などにより長時間労働の是正に取り組む企業に対しては、国は助成金を支給することで支援を行っています。これからは、中小企業においても労働時間管理が経営問題として大きくクローズアップされることになります。本稿でご紹介した助成金を積極的に活用して、労働時間対策に取り組んでいただきたいと思います。

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